本書は、今日、多くの先進民主主義国家が直面している諸問題を、現代政治学の理論を踏まえ、特に日本の現実政治も視野に収めつつ論じる。現在、選挙での低投票率、無党派層の拡大、政党不信や政治不信が至るところで目撃されている。低迷する政治の打開策として挙げられるのは、「直接民主制」の導入である。果たして直接民主制が政治の機能不全を解決しうる処方箋となりうるのであろうか。議会制民主主義そのものの問題と関連させ、広範な視角から議論を展開する。

第1章　議会制民主主義と政治における選択
1　民主主義の競合的モデル
2　古典的民主主義と現代民主主義
3　議会制民主主義の枠組
4　競合的エリート民主主義理論への批判

第2章　議会制民主主義の展開と社会構造
1　社会的亀裂と政治
2　政党システムと社会的亀裂
3　政治発展の比較研究
4　「中心―周辺」論
5　変数としての「国家」

第3章　社会構造の変化と民主主義の原理
1　社会的バランスと民主主義
2　戦後における豊かな社会の出現
3　ポスト豊かな社会
4　新保守主義の時代と社会構造変化における問題点

第4章　政党機能の変容
1　政治の選択肢としての政党
2　政党の衰退
3　政党の地位低下
4　政党機能の脆弱化
5　ネオ・コーポラティズム論の背景
6　「コーポラティズム」の概念
7　マクロ理論からメゾ理論へ

第5章　政党組織の変容
1　政党政治の現在
2　反政党的な政党組織論
3　政党組織の類型
4　政党組織の二つのモデル
5　カルテル政党モデルの登場
6　政党の現在

第6章　民主主義と政党システム
序　問題の所在
1　分析の視角
2　政党システムのタイポロジー
3　政治的対立軸と政党システム
4　政治的対立軸と社会構造
5　選挙制度と政党システム
6　連合政権と政党システム
7　統治形態と政党システム
8　政党システム変化の諸形態
　　総括と展望