保育者は、単に自身の得意とする分野に力を発揮して保育をするだけでなく、子どもにとって、幅広い範囲の望ましい経験を保障することが求められる。
これらを踏まえて、保育の内容を「各論」としてだけではなく、「総論」として学ぶことは一層重要だと考えざるを得なくなる。なぜなら、子どもが実際に経験する内容、経験すべき内容、保育者が指導する事柄は、常に子どもの知情意・身体の総合的活動に基づくものだからである。また、子どもの遊び・生活は、多様な形態に変化しうるものであり、保育者は、それに柔軟に対応する必要がある。
保育者になろうとする者は、保育内容を概説として学びながら、各論に進むべきであり、また各論を学びながら、学習したものを相互に結びつけるべきである。保育内容についての学びは、この2つの方向がある。
保育内容総論は、保育者養成課程の中で学ぶべき授業科目名でもある。授業科目としての保育内容総論は、初年次に配当する学校もあれば、卒業年次に近い学年に配当する学校もある。それは、上に述べた、2つの方向のどちらかを重視してカリキュラムを配列した結果である。本書は、このどちらのタイプの養成校でも、教科書として有効に使用できるよう工夫してある。