近年、子どものコミュニケーション能力の不足や自制心・規範意識の不足などが指摘されている。こうした人と関わる力の育ちの問題には、社会や家庭のあり方が関わっている。少子化は、地域で子どもどうしの仲間形成がしにくくなったり、小さな子どもとの関わりを持たないまま大人になった母親が子育てに悩み、わが子との関係をうまく築けなかったりする状況を生み出している。情報化の進展は、私たちの生活を便利にする一方で、人と人とが直接に関わる機会が減少したり、軽視されたりする風潮を作り出している。
幼稚園や保育所では、保育者や友達との関わりを通して、さまざまな感情体験を重ねながら、人と関わる力を身につけていくことができるよう保育している。また、人間関係の基盤となる親(養育者)との愛着関係がうまく築けるよう保護者の支援を行うことも、保育現場がその役割を担っている。
本書は現場の保育者がその力量を高めるために、また、乳幼児や保育に関心がある方々が、保育や乳幼児について理解するために役立つような書となることを願ってまとめられている。
できるだけ事例や写真を用い、子どもの生き生きとした姿や奥深い保育の実際に配慮した。子どもたちが人と関わる力を身につけていくために、保育者として必要な知識と実践力を養ってほしいと願っている。