一藝社

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ジャンル:教育
 

はじめての保育実践研究
 

[著]開仁志

価格(税別): ¥ 2,200


概要

研究者になりたい実践者のためではなく、実践者のため、子どものために保育実践研究を願った、「はじめて」保育者さん待望の書です。
 保育実践研究には、誤解があります。「研究者から評価されるような学術的に評価が高い」、「事例研究等の質的研究ではなく数値として効果が示される量的研究」のほうが価値が高いといったものが代表的な誤解です。
 保育実践研究は、子ども、保育者、保護者といった生の存在にとって意味があることが大切です。当事者意識が無いと成り立ちません。これが、研究者や学校で取り組んだ卒業論文等との決定的な違いです。保育は奥深く総合的なものなので、数値で捉えて成果を表すだけで全てを語ることはできません。
 実践者が、保育の質向上をする上で、できるだけ無理なく自然な形で取り組むことができ、やりっぱなしではなく、今までの保育実践でわかったことを踏まえて次のよりよい保育実践に取り組むことができる、そんな保育実践研究になることを願っております。
 そのためにも、保育者自身が子どものために「おやっ」「なぜだろう」「知りたいな」と「問い」をしっかりと持ち、自分自身が知りたいことにふさわしい研究方法で取り組み、結果をじっくりと考察し、成果と課題を次の保育実践につなげていく保育の質向上のリレーをぜひ始めてみましょう。

目次

1 研究って何だろう?
1【Q】 研究って何ですか?
【A】 研究とは、「問い」をつくり、その問いに答えるために計画的に 「調査」を行い、「何か」を「明らか」にし、「公開」することです。

2【Q】 「実践記録」「実践報告」「実践研究」の違いは何ですか?
【A】 「研究計画に沿った調査」「結果を考察して公開」「研究の流れに位置付け」の3点がポイントです。

3【Q】 実践研究では、なぜ「研究の流れに位置づけ」が必要なのですか?
【A】 全ての保育実践研究者が協力して保育の質を向上していく研究のリレーを行うためです。

2 学問としての研究と実践研究
4【Q】 研究者の行う研究と実践者が行う実践研究とは、何が違いますか?
【A】 実践研究になるためには、「誰が(主体)」行い、「何のために(理由)」「何を(対象)」「どのように(方法)」研究するかによって決まります。

3 研究倫理について
5【Q】 研究倫理とは何ですか?
【A】 研究を行うにあたり、守らなければならないルールのことです。これに反している研究は認められません。

U章 研究体制の構築と計画作成
1 さまざまな単位による研究体制の構築と計画
1【Q】 団体で行う研究の特徴は何ですか?
【A】 団体の場合では他園との交流から見えてくる互いの特徴や課題の明確化が目標です。

2【Q】 自園で行う研究の特徴は何ですか?
【A】 園単位では自園の優先課題の改善が目標です。

3【Q】 個人で行う研究の特徴は何ですか?
【A】 個人であればキャリア形成が目標です。

2 研究計画の立て方
4【Q】 研究計画はどうやって立てますか?
【A】 発表時期から、逆算して考えて見ましょう。

5【Q】 研究どおりいかない場合、どうすればよいでしょうか?
【A】 計画はあくまでも計画、変更した意味を考察し、研究経過として生かしていってください。

6【Q】 「研究経過」は必要ですか?
【A】 実践研究が変容していったプロセス自体を明らかにするため「研究経過」を書くことには大きな意義があります。

3 研究協力者との関わり
7【Q】 研究協力者は必要ですか?
【A】 何度も実践研究に取り組み、積み重ねがあれば、他に研究協力者がいなくても、自分たちなりに研究を進め、自園の保育の質を向上していくことは可能です。ですが、研究協力者の存在が実践研究を高めてくれる場合が多くあります。

8【Q】 研究協力者はどうやって関わってもらえばよいでしょうか?
【A】 公開されている情報を基に、研究テーマと照らし合わせて依頼するとよいでしょう。

V章 研究のテーマをきめよう
1 研究テーマとは何か?
1【Q】 研究テーマと研究タイトルはどう違いますか?
【A】 研究テーマは、研究をするにあたって問題となる事柄や基本となる考えかた。研究タイトルは、研究の題名です。

2【Q】 研究テーマの構造を教えてください。
【A】 「動機」「対象」「問い」の3つです。

3【Q】 研究をスタートするための原動力は何ですか?
【A】 研究をスタートさせる原動力は、実践者自身の「動機」です。

4【Q】 研究の「きっかけ」と「動機」は違いますか?
【A】 「きっかけ」は積極的なものばかりではなく、受け身的、消極的なものも全て含めます。一方、「動機」は、実践研究をスタートさせるに至った、実際に動き始めるきっかけになった自分の中の明確な理由になります。

5【Q】 研究の動機にはどのような種類がありますか?
【A】 動機にはプライベイトの「私」、保育者としての「私」、保育者集団としての「私たち」「子ども」「子どもたち」「保護者」「社会」「学術的」といった種類があります。

6【Q】 研究の「対象」となる素材(ネタ)はどうやって見つければよいですか?
【A】 研究の「対象」となる素材(ネタ)を見つけるためには、興味・関心の幅を広げることから始めましょう。

7【Q】 「問い」の作り方を教えてください。
【A】 問いは、当たり前、常識とされていることに突っ込みを入れるクリティカル・シンキングを持つことで生み出されます。

8【Q】 問いにはどのような種類がありますか。
【A】 問いにも、いろいろな種類があります。自分が本当に知りたいのは何でしょうか?

9【Q】 「問い」と「研究目的」の関係は何ですか?
【A】 明らかにしたい大きな「問い」の中で、研究目的は今回行った実践研究に関する限定された「問い」です。

10【Q】 研究テーマは、どんなものでもよいですか?
【A】 研究テーマは、自分にできること、できそうなことを考えて決めます。

11【Q】 研究テーマとしてふさわしくないものはありますか?
【A】 子どもの最善の利益を害するもの、保育者としてあるまじきものはふさわしくありません。

W章 研究方法を選ぼう
1 研究目的によって研究方法が決まる
1【Q】 研究方法は、どうやって選べばよいですか?
【A】 研究目的に応えるために、一番適した方法を選びます。 

2【Q】 保育実践研究では、どの研究方法が適していますか?
【A】 研究の対象となる保育実践そのものを記録して考察する事例研究が基本となります。ですが、保育実践を支える背景を分析・考察するためにさまざまな研究方法を組み合わせる必要があります。

2 研究方法ごとの進め方
3【Q】 事例研究の進め方を教えてください。
【A】 研究テーマに沿って、必要な情報を意識して記録します。

4【Q】 環境研究の進め方を教えてください。
【A】 環境図等の視覚的な情報を記録し、時間、空間、対象等を分析考察します。

5【Q】 教材研究の進め方を教えてください。
【A】 子どもの興味・関心・発達に合わせて教材を工夫して、実践した結果を考察します。

6【Q】 ツール開発の進め方を教えてください。
【A】 記録や計画のフォーマットや活用方法を使いやすく工夫して、その効果を検討します。

7【Q】 研修方法の、開発の進め方を教えてください。
【A】 園内研修や園外研修を工夫して、楽しく充実した園づくりのあり方を探ります。

8【Q】 システムの、構築の進め方を教えてください。
【A】 園の体制からくるさまざまな課題を克服する工夫を探ります。

9【Q】 アンケートの進め方を教えてください。
【A】 園職員や在籍児の保護者等を対象にアンケート(質問紙)による調査を行います。

10【Q】 体力測定、ケガの頻度の調査等の進め方を教えてください。
【A】 体力やケガの頻度の調査等、量的データをとることによって、実態や実践前後の変化を記録し考察します。

X章 調査をしよう
1 調査の進め方の基本
1【Q】 調査の進め方の基本は?
【A】 研究の対象となる実践を決め、ルールに則って記録していきます。

2 保育実践そのものを対象とする場合の進め方
2【Q】 保育実践そのものを対象として調査を進めるための流れは?
【A】 @まず「子ども理解」から始め「環境」や「援助」のポイントを探り(探索的)、A得られたポイントを基に保育実践を行い分析・考察します(検証的)。Bさらに、計画に位置づけていきます。

3【Q】 事例を取るポイントを教えてください。
【A】 事例を取る6W2Hを押さえて取りましょう。

4【Q】 事例を書くポイントを教えてください。
【A】 事例の書き方には主に3種類あります。

5【Q】 環境研究、教材研究の目的は何ですか?
【A】 環境研究は子どもの身の回りの環境全てを対象として研究します。教材研究は、環境の中で特に一つひとつの教材に着目し、教材の子どもにとっての意味や保育実践に取り入れるとしたらどうすればよいかというポイントを明確にしていくことが目的です。

6【Q】 環境研究の進め方を教えてください。
【A】 環境研究では、保育室、遊戯室、園庭等を全体的、俯瞰的、空間的に捉えて子どもにとってどのような環境になっているのか、子どもの育ちにつながる環境を構成するためにはどうすればよいかをつかみます。

7【Q】 教材研究の進め方を教えてください。
【A】 教材研究は、環境の中でも、一つひとつの教材に着目して研究する方法です。ねらいにつながる内容(経験)を得られるような教材は何かを以下の流れで明らかにしていきます。

3 保育実践を支える工夫を対象とする場合の進め方
8【Q】 保育実践自体を対象にする以外の実践研究はありますか。
【A】 保育実践を支える体制やシステム、役立つツール開発、研修方法の開発に取り組んでみてはいかがでしょう。

4 実態を対象とする場合の進め方
9【Q】 インタビュー・アンケート調査はどうやって進めたらよいですか。
【A】 子どもを対象とするか、大人(保護者、保育者を相手にするか)で変わってきます。

10【Q】 チェックリスト方式の調査はどうやって進めたらよいですか。
【A】 子どもの様子や、環境、保育者の援助等を観察し、観察者がチェックしていく方法があります。どの観察者が見ても同じようにチェックできるようなチェックリストを予め作成しておき、チェックリスト項目に当てはまる場合チェックします。

Y章 研究をまとめよう
1 論文お書き方の基本
1【Q】 論文の研究タイトルはどうやってつけますか?
【A】 研究テーマ(研究タイトル(仮))の、@「動機」、A「対象」、B「問い」に加えて研究タイトルにはC「着眼点」を入れます。

2【Q】 研究で使う専門用語の扱い方について教えてください。
【A】 研究で使う専門用語は、定義をして使います。

3【Q】 論文の構成はどのようになっていますか?
【A】 序論、本論、結論が基本です。

2 序論の書き方
4【Q】 序論の書き方を教えてください。
【A】 @背景・動機、A意義、B目的を示して、何を明らかにしたい研究なのかを的確に伝えます。

3 本論の書き方
5【Q】 本論の書き方を教えてください。
【A】 どのように研究を行ったのか、伝わるように必要な情報を具体的に述べます。

6【Q】 結果の書き方を教えてください。
【A】 研究目的と関連し、結論を述べるために必要な証拠となる事実を厳選して載せます。

7【Q】 考察の書き方を教えてください。
【A】 結果を基に、研究テーマに沿って考えたことを整理して書きます。

4 結論の書き方
8【Q】 論文における文章の留意点が何ですか。
【A】 「である調」で書くこと。断定的な言い方をする語尾に気をつけることです。

9【Q】 「結果」「考察」「まとめ(総合考察)」の関係は。
【A】 「結果」は事実のみ、「考察」は結果を基に考えたことを書きます。「結果および考察」では、結果ごとに考察を書きます。「まとめ(総合考察)」では、研究目的に対応させて何が明らかになったかについての結論を書きます。

10【Q】 研究の成果をどのように示せばよいでしょうか。
【A】 実践はすぐに効果が表れるということが難しいものです。また、一つの実践についても多様な見方ができ、成功失敗ではとらえられないことも多いものです。ですが、工夫することで、効果を示唆することができます。

11【Q】 結論(総合考察)の書き方を教えてください。
【A】 結論(総合考察)では、論文全体を通して明らかになったことを研究目的に対応させて述べます。

12【Q】 引用・参考文献の書き方を教えてください。
【A】 引用・参考文献はルールに従って書きます。

13【Q】 章立ての仕方を教えてください。
【A】 階層や骨組みを考えて、全体のバランスを整えます。

Z章 研究を発表しよう
1 発表は何のためか?
1【Q】 発表は何のために行いますか?
【A】 今回の実践研究で得た知見を次の保育実践に生かすためです。

2【Q】 発表内容はどこまで述べればよいのでしょうか。
【A】 発表する目的や発表の聞き手が持っている情報によって発表内容は変わります。

3【Q】 同じような内容の実践研究発表ばかりになってしまいます。
【A】 実践研究を発表したことが、次の実践研究や保育実践そのものに生かされていくためには、工夫が必要です。

2 発表の実際
4【Q】 口頭発表とは何ですか?
【A】 口頭発表とは、発表者が聞き手を前にして口頭で発表した後、質疑応答の時間を設ける形式です。

5【Q】 ポスターの発表とは何ですか?
【A】 ポスター発表とは、等身大くらいのパネルに発表内容を印刷した大型のポスターを張り、その前で発表者が聞き手とやりとりをしながら発表する形式です。

[章 保育実践研究の落とし穴
1 実際が分かりました。だからどうしたの?
1【Q】 実態調査をして、結果を出しただけで終わってしまいました。
【A】 何のために実態調査をするのか、その結果を何に生かすのかを計画してから始めましょう。

2【Q】 ありきたりな結論になってしまいます。
【A】 結論ありきの研究をしている可能性があります。ありきたり自体を問う、実践のあり方そのものを問うという姿勢が必要です。

2 効果がありました。本当ですか?
3【Q】 どうすれば実践に効果があったと言えますか?
【A】 効果の検証はなかなか実践研究では言いづらい面がありますが、効果があったと考える姿(目標)を設定し、どれだけ近づけたが(方向目標)で示すことができると考えます。

書籍情報

  • ISBN-13: 978-4-86359-191-2
  • 発売日: 2019年4月3日
  • サイズ: A5判/並製
  • ページ数: 194頁

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