本書は、教職課程を履修している学生に向けた「総合的な学習/探究の時間」(総合の時間)の教科書です。その一方で、より広い範囲の読者層として、総合学習の実践にすでに携わっている教員や、その最新動向を知りたい一般の読者に向けても書かれています。
第1部「理論編」では、教職課程コアカリキュラムの各項目をカバーする章と、やや踏み込んだ内容を扱う章とを配置。現役の大学院生や若手研究者による共同執筆を通して、予備知識なしでも分かりやすい記述を目指しました。また、各章末には、議論のポイントとして「話し合ってみよう」を、読書案内として「もっと学びたい人のために」を設けています。
第2部「実践編」では、福島県の小学校、中学校、高校で取り組まれている実践例を2校ずつ紹介。特色のある取り組みをしている現場の教員が執筆した章のほか、東京大学相馬プロジェクトの学生が何らかの形で関わった実践を紹介する章も含まれています。福島県の実践例に限定して提示したのは、特定の地域内でも、多様な「地域」との向き合い方があることを実感してほしいという想いに基づいています。
本書のタイトルには「学生の目線からの記述」という本文の特色に加えて、「学生時代までの経験則や当たり前から一歩前に踏み出せるように」という執筆者一同の願いも込められています。総合学習の理論と実践を往還する「奥深さ」と「難しさ」を、読者と共有できれば幸いです。(「はじめに」より抜粋)