ヨーロッパの「白人」とは何か。
その本質を問う画期的な論考が登場した。
<私が本書で主張していることのいくつかは、欧州の読者よりも日本の読者の方が明確に思えるかもしれない。実際、私が主張するいくつかの点、特に欧州のアイデンティティは白人性(ホワイトネス)と密接に結びついているという考えは、日本の読者にとってはほとんど自明のことに思えるだろう。>
(「日本語版への補遺――ユーロ・ホワイトネスと日本」より)
<欧州の読者の中には、欧州の民族的・文化的観念が1945年以降も存続し、欧州統合に影響を与えたという指摘を不快に思う人もいるかもしれない。だが、EUが欧州人のアイデンティティの純粋に市民的概念に基づくコスモポリタンなプロジェクトであると一部の欧州人が想像していたことを知り、日本の読者はもっと驚くかもしれない。>
(同上)
本書の著者クンドナニは、<かつて英国に植民地化されたインド出身の父親、そしてEC原加盟6か国のうちの一つであるオランダ出身の母親を持ち、自身は英国で育ってきた。>
(「訳者解説」より)
著者はまた、オックスフォード大学、コロンビア大学大学院で学び、英国「オブザーバー」「フィナンシャル・タイムズ」、米国「ウォールストリート・ジャーナル」などでジャーナリストとして活躍したしたのち、英国王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)などで研鑽を積んだ、気鋭の研究者である。
本書は、自身を<欧州人であるとともに、アジア人であると考えていた>著者が、その思索を練り上げ、<私たちが現在、目にしている欧州とは異なる欧州が必要であることを、欧州人を説得するつもり>で書いた深い洞察の書であり、かつ今後の日本が、「白人」の国々と「白人」以外の国々とを冷静に見極め、どのように進んでゆくべきかを示唆する警世の書でもある。