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ジャンル:政治
 

中国近代思想と自由思想
 

[著]齊藤泰治

価格(税別): ¥ 3,000


概要

(序文より抜粋)この論文集は、一篇を除いて、1995年から2012年までの期間に、早稲田大学政治経済学部『教養諸學研究』に掲載された論文を集めたものである。対象とした時代は、19世紀末の清朝末期から1920年、30年代、そして2000年前後の現代中国までを含んでいる。
形式面で一部変更を行い、第2章について当時未発表だった7以降を加え、第7章の4を部分的に書き換えたほかは、内容的に大きな変更を加えていない。今では存在しないURLなどもそのまま残しておいた。これも歴史であり、そのこと自体が様々なことを語りかける場合もあるからである。
中国近代思想には様々な描き方がありうる。1920年前後には多様な思想が一挙にあらわれ、百花繚乱の状況を呈した。新旧思想の違いが意識され、異文化接触により、それまでになかった問題提起が行われ、1910年代の半ばから、いくつかの象徴的な論争が起こった。
複雑な思想状況を論争という形でとりあげることによって、東洋思想と西洋思想、伝統思想と近代思想あるいは外来思想とが影響しあうと同時に、ぶつかりあった時代の特色を浮かびあがらせることが可能である。当時の当事者たちが思いもしなかったような問題提起を百年後のわれわれは見いだすことになるかもしれない。
多様な思想が浮沈する中で一貫してその根底に流れているのは何か。20世紀前半と、それから百年後の思想状況を検討する意味はあるのか。あるとすれば、どこにあるのか。1980年代後半から20世紀末にかけて、数十年の時を超えて出現したかに見えた思想的景観はいかなるものだったのか。直接的な、そして一貫した私の問題意識はそこにあった。
なぜ途中の期間をとばして、この2つの時期をとりあげたのかということについて、説明する必要があるだろう。清朝末期の思想的変革は民国を生み、政治面、文化面での変動を引き起こした。19世紀末から20世紀初めにかけて、変法運動、立憲への動き、革命派の活動などがあらわれ、それらが政治活動に反映された。思想的に見ても、この時期が中国思想の一つの大きな転型期であったということができよう。

20世紀末を迎えようとしていた時期に、もう一つの大きな思想的転型が起こった。それを引き起こす大きな要因となったのは、現代中国における1980年前後からの改革開放による諸環境の変化である。20世紀末におけるこの流れは、大きな思想的変革を引きよせ、現実政治に影響を及ぼす可能性を孕んでいた。数十年の時を隔てて大変革が起こったと認識する根底には、このようなある種の共通性の存在がある。

時代ごとに様々な思想がうねっており、その中のあるものは現実政治の中で主流におどりでて大きな影響力を発揮し、あるものは排斥されて消えてゆき、あるものは排除されたかにみえて底流としてのこりつづけていく。中国近代の政治を突き動かしてきた思想は何だったのか、各時代の思想の本流といえるものは何だったのか。中国近代思想の中で自由思想が果たした役割は何だったのか。こうした問題を考えるきっかけにしていただければ幸いである。

目次

第1章 厳復『原富』の按語について
第2章 梁啓超「自由書」と「新民説」
第3章 中国における啓蒙思想期
第4章 新旧論争、東西文化論争
第5章 「問題と主義」論争
第6章 社会主義論争
第7章 無政府主義論争と「自由」
第8章 ギルド社会主義について
第9章  「自由主義」と「新左派」の論争(1)
第10章 「自由主義」と「新左派」の論争(2)
第11章 1990年代後半から現在までの中国におけるナショナリズムをめぐって(1)
第12章 1990年代後半から現在までの中国におけるナショナリズムをめぐって(2)
第13章 20世紀前半の中国における自由主義(1)―張佛泉の自由論―
第14章 20世紀前半の中国における自由主義(2)―胡適と『新月』―
第15章 20世紀前半の中国における自由主義(3)―羅隆基と『新月』―
第16章 20世紀前半の中国における自由主義(4)―梁実秋、『自由評論』―
第17章 大隈重信と東京での康有爲

書籍情報

  • ISBN-13: 978-4-86359-298-8
  • 発売日: 2025年10月9日
  • サイズ: A5判/並製
  • ページ数: 292頁

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